
ACIMの赦しと学び
ACIM誕生にまつわる物語
~ ヘレンとウイリアム ~
ACIMは、ヘレン・シャックマンの内なる心の声を
ウイリアム・セットフォードによってタイピングされることで誕生しました。
そのきっかけとなった出来事は、
「奇跡講座 まえがき *由来*」にも記されているように、
ACIM誕生の秘話の中で、語らずにはいられない出来事として語り継がれています。
その物語には、
ACIMが一貫して教えるカリキュラムの中で 最もシンプルであり、
思考を逆転させるための最初の一歩として、とても強力な言葉(概念)が含まれています。
そして それは、何よりも、
ヘレンとウイリアム自身がその言葉によって導かれ、
共同作業によって ACIMを生み出し、世界中の人たちが、心の独習コースとして学ぶことになる
最初の一歩を踏み出した時の概念です。
ACIM誕生にまつわる出来事や、 ヘレンとウイリアムとの関係性には、
私たちが学ぶべく 多くのことがあります。
ACIMの筆記を通して 彼らが抱く感情や出来事などは、まさしく、
ACIMを学ぶ 私たちの間でも、常に繰り広げられる人間関係や出来事を象徴するものであり、
それが、そこにそのまま見て取れます。
そうしたことを踏まえつつ、その概念を真に学ぼうとするなら、
私たちは、この世界のどんな場面にでも それを有効に使うことができ、
心を脅かすかに見えるどんな出来事にも、恐れを抱かずにいられるようになっていきます。
あらゆる関係性やものごとに対する見方が、次第に変化していきます。
「奇跡講座」まえがきの ヘレンによる紹介文には、
ウイリアムによって、ACIM誕生のきっかけとなった シンプルで強力な概念が語られるまでの
ヘレンとウイリアムの関係性について、以下のように紹介されると共に、
ヘレンが、自分自身について描写している文章が記されています。
『奇跡講座』は、二人の人間が共通の目標のために協力し合おうと、
突如、決意したところから始まった。
この二人の名前は、ヘレン・シャックマンとウィリアム・セットフォードである。
どちらも、ニューヨーク市にあるコロンビア大学医学部医療心理学科の教授であった。
彼らが誰であったのかは重要ではないが、
この出来事は、神によればあらゆることが可能だということを示してはいる。
二人とも、霊的なことにはおよそ無縁であった。
二人の仲は難しく、時に緊張をはらみ、どちらも
個人としても専門家としても名声や地位に関心を抱いていた。
概して、この世界の価値観にかなりの執着があった。
本書の教えのどの内容ともおよそ相容れない生活だったのである。
+ + +
心理学者・教育者として、意見は保守的、信条は無神論者であった私は、名声ある高度にアカデミックな環境で働いていました。そんな私にある出来事が起こり、それがきっかけで、まったく思いがけないことが次々と始まったのです。そのきっかけとは、私の学科の責任者が、私たちの態度に現れている怒りや攻撃の感情にはうんざりしたと言い出し、「何か別の道があるはずだ」と結論したことです。まるでそれが合図であったかのように、私もその道を見つけるのを手伝いましょうと言ってしまいました。どうやらこのコースがその別の道だったようです。
「何か別の道があるはずだ」
この言葉は、ACIMの中で最もシンプルで、
思考を変えるための最初の一歩として、とても大事な概念です。
私たちがこの世界で抱えている あらゆる問題を解決するためのきっかけとして、
ACIMが教えるいくつもの概念の中で、最も基本的なものです。
ヘレンとウイリアムは、
こうして、今までとは違った別の道を選択することで、
ヘレンにはACIMの口述筆記が始まり、ウイリアムがそのサポートとしてタイピングするという
共通のゴールに向けて、お互いの役割が与えられていったのです。
「奇跡講座」まえがきには、もうひとつ、
ヘレンの手記の一部とともに、ACIMの教えの核となるような、とても大切なことが記されています。
実際に筆記が始まる前の3ヶ月間は驚くことばかりでした。その間、ビル(ウィリアムのこと)の提案に従って、私は自分が受け取っている非常に象徴的な夢や、奇妙なイメージの描写を書きとめることにしました。そのようにして予期せぬ出来事に慣れてきてはいましたが、「これは奇跡についてのコースである」と書きとめたときは、自分自身びっくりしました。そしてこれが、私と声との出会いでした。音は聞こえませんでしたが、それは私の中でかなりの速さで語られる口述のようなもので、私は速記用のノートにそれを書きとりました。筆記作業は自動筆記のようなものではなく、いつでも中断でき、また後から続けることができました。私はひどく落ち着かない気分でしたが、本気でやめようと思ったことは一度もありませんでした。それを自分の特別な任務として成し遂げることに、私自身がいつかどこかで同意していたような気がしたのです。
筆記作業は、真の意味でビルと私の共同事業でした。そしてその意義の大部分はこの協力の中にあったと、私は確信しています。その声が「言った」ことを私が書きとめ、翌日、私の読み上げる内容をビルがタイプしました。彼にとっても、これは特別な任務だったと思います。彼からの励ましと援助がなければ、私は自分の任務を果たすことはできなかったでしょう。
+ + +
二人の意図は真剣ではあったが、共同作業は当初は困難を極めた。
しかし彼らは、「わずかな意欲」を聖霊に差し出した。
これが、その後『奇跡講座』自体が繰り返し力説するようになる
「わずかな意欲」であり、
それさえあれば、あらゆる情況が聖霊の目的のために使われ、
そこに聖霊の力を与えるに充分である。
ACIMの表紙には、どこを探しても
ヘレンとウイリアムの名前を見ることはありません。
それは、
「その内容自体によって価値あるものとなりえるし そうあるべき」であること、
「新たな新興宗教の基盤になることは意図されていない」こと、
「唯一の目的は 人々が自らの内なる教師を見出せるようになるための道を一つ提供する」ことが、
理由だとしています。
私たちは 時として、その誕生秘話から、
イエスの言葉を書きとった人物や出来事に焦点をあてては、
そうしたことの方を重要視したり、執拗に意識したり、
挙句の果てには、それは真実か否か と議論して、その内容を無視してしまいがちですが、
そうしたことは、ACIMの教えの本質を見失うだけとなってしまいます。
こうしたことが真実であろうとなかろうと、どこの誰が記述しようと、
ACIMの教えそのものが、純粋な非二元を保つための教えとして 真実を伝えている ということは、
実践した誰もが実感することと思います。
「何か別の道があるはずだ」
この言葉によって、ヘレンとウイリアムに与えられたそれぞれの役割は、
通常の勤務の傍らで、他の誰にも知られることなく、全うされていきました。
そして、その口述筆記が行われる中で、
最悪だった ヘレンとウイリアムの関係性も、一時は次第に良くなっていったそうです。
ただ、私たちの誰もが知るように、
一度拗れた関係性を修復するのは、至難の業です。
ヘレンとウイリアムの関係性も 完全に修復されることはなく、最後まで、
真に分かり合えることはなかったと言います。
ただ、
ワプニック博士がビデオ講座でお話されたという、次の内容が助けになります。
JACMのサイトから、その文章の一部を引用します。
私がヘレンとビルの話をする時に、いつも強調する事柄の一つが、このコースは人里離れたどこかの修道院に住む神聖な修道女に口述されたわけではない、ということです。
このコースは、お互いに反目し合っていた二人の心理学者に与えられたものでした。彼らは 更に、同じように反目し合っていた同僚たちがいる医療センターで働いていました。
そこは、おそらく自我の憎悪にあふれた思考体系を最も顕著に象徴する場所であったと言えますし、その医療センターの所在地ニューヨークも、おそらく、貪欲、競争意識、特別性、憎悪といったものを世界でも最も顕著に象徴する都市だと言えます。
それが、このコースが生まれた飼葉桶となった場所だったのです。そして、この事実には、重要なメッセージが含まれていると私は思います。
ヘレンが『コース』を書き取っていた時期は、ヘレンとビルが医療センターで働いていた年月の中でも最も忙しくしていた時期に相当します。
彼らは本当に忙しくしていました。ですから、彼らはものすごく忙しいスケジュールの中に何とかこのコースをはめ込まなくてはなりませんでした。『コース』がやってきたのは、彼らが暇をもてあましていて、『コース』の筆記に使える時間がたっぷりあるといった時期ではなかったのです。二人とも非常に忙しく様々な問題に取り組んでいましたし、数々の研究費の申請書や、学術機関誌用の原稿や、論文を書いていましたし、互いとのやりとりにも時間が必要でした。
こうした状況だったということを理解しておくことは、〔このコースを理解する上でも〕常に役立つはずです。
ヘレンとウイリアムに与えられた任務は、
口述筆記が始まって以来、ほぼ毎日のように7年もの間 行われたといいます。
こうした忙しい時期の中にありながらも、
二人が共に その任務を投げ出すことなく、最後まで行い続けたということは、
本当に奇跡です。
ヘレンとウイリアムのどちらか一方でも、
途中で その任務から降りていたなら、いま こうして、
私たちが ACIMを手に取り学ぶことは、なかったかもしれません。
それを思うと、
二人が、共にその役割を受け入れ、最後まで その役割が果たされた ということ自体、
尊敬に値することであり、感謝せずにはいられないことです。
二人の関係性が、二人が生きている間に完全に修復されなかったとしても、
最初に、内なる声を聞き取ったことを ウイリアムに相談したヘレン、
それをタイピングしようと引き受け、ヘレンを励まし続けたウイリアム、
共同作業で任務を成し遂げた、その二人がいたことだけで、充分のように思えます。
<参考>
○奇跡講座上巻 ・「奇跡講座」まえがき
○JACIM(奇跡講座 学習支援サイト)
・「奇跡講座」とは? ・「天国から離れて」引用文集 ・ 質問 NO.39
<日本図書館協会選定図書>
○天国から離れて ヘレン・シャックマンと「奇跡講座」誕生の物語
ケネス・ワプニック 著 / 加藤三代子・澤井美子 共訳